トランプ用語の基礎知識

 1 歴史

 トランプは、太古の時代、天候や運命の占いに使われた印の付いた矢が、印の付いた棒、絵が描かれた板、そして絵が描かれた紙に変化したものがルーツとされており、このことから次の3説が挙げられますが、どれもはっきり分かりません。

根拠
エジプト説古いトランプに描かれていたエジプト風の絵
インド説インドで考えられた、トランプに似た将棋か、ヴァラモン教典
中国説漢王朝(紀元前202年〜紀元220年の中国)で占いに使われた矢が棒を経て、唐王朝(紀元618年〜907年の中国)で遊びに使われた紙札

 ともあれ、中世(14世紀)には、トランプに関する史料が残存します。1377年秋に、スイスのバーゼルの修道僧ヨハネスが修道僧らしく几帳面な文字で、「この年に札遊びはやってきたと」と書き記されたものが信頼性の高い史料とされ、1から10までの数札と3、4種の絵札に、それぞれの4つの形の1組計52〜56枚で構成されたとあります。15世紀前半にカーネフェルというトリックゲームが広まり、ここに切り札の原型が見られます。
 タロットカード(tarot card、以下タロット)が登場したのもこの頃ので、タロッコ(tarocco、複数形でタロッキ:tarocchi)と呼ばれたものがイタリア北部で作られ、それまでの56枚の数札・絵札(小アルカナ)と22枚の寓意(ぐうい)画が描かれたタロットという特殊な切り札(大アルカナ)を合わせた神秘的な札です。前者はいにしえの時代の自分と社会を表しており、4つの形と、1から10までの数、そして兵士、騎士、女王、王の14枚ずつの計56枚、後者は宇宙の真理を解き明かしているものといわれ、1番の「奇術師」から、女教皇、女王、皇帝、法王、恋人達、戦馬車、正義、隠者、運命の輪、力、吊された男、死、節制、悪魔、神の塔、星、月、太陽、審判、世界の順に強く、特殊な札として22番の「うつけ者、道化師(ピエロの姿でも王宮に自由に出入りできる、世の中の様々な栄光と悲惨を経験した永遠の旅人と伝えられる)」の計22枚となっています。
 このようにトランプの原型となったタロットですが、「悪魔の絵本」として迫害された時代もあれば、荒波に投げて静めようとする迷信も生まれました。
 16世紀になって、アジアから中近東、そしてヨーロッパへと西へ渡っていったジプシーという放浪民族は、タロットを占いに使うようになり、ヨーロッパ中にタロット・トランプ占いを広めていきました。折しも世界は大航海時代の真っ只中で、アジア各国にもタロットがポルトガルなどによって広まり、後にインドのガンジファ(ganjifa)や日本のうんすんかるた・花札として発展しました。そのうんすんかるたも、日本ではかなり人気が高く、土佐(高知県)の大名長宗我部元親の分国法「百箇条」で禁じられる始末でした。
 やがて、近世(18世紀)になると、フランスを中心に王侯御用達の占い師が生まれ、彼らの予言が当たったため、占いはますます広まり、中でもフランス皇帝ナポレオン(Napoleon)は大の占い好きで、女トランプ占い師マリー=ル=ノルマン(Mary=le=norman)を側近として占わせました。彼の結婚相手を占ったところ、パリ社交界の花形ジョセフィーヌとの結婚が当たり、味を占めた彼は、重要な戦いの前に占わせたといわれています。
 ところが、ルノルマンは敗戦と廃位まで予言したため、ナポレオンの怒りを買って、追放されましたが、彼女の予言通りに敗戦、廃位されました。
 その頃から、トランプは大西洋を渡って、新大陸アメリカに伝わりました。印刷技術の発達で大量生産されると、あまたの人々が遊びや占いに親しむようになり、タロットの小アルカナのうちの騎士がなくなって枚数が52枚に減り、形も変わって現在のトランプになりました。
 余談ですが、※ドナルド=キャンベルは、レース2時間前に自分の運命を占ったところ、スペードのKとQという悪運の札が出て、その札の予言通り、キャンベルはレース中に大事故に遭って、命を落としたといわれています。

※ドナルド=キャンベル:1950年〜60年代にかけて活躍したイギリスの競艇選手で、自動車でスピードの世界記録を更新したマルコム=キャンベルを父とする。彼の車やボートは「ブルーバード」と呼ばれ親しまれたが、1967年1月4日、イギリスのコンストン川で行われたレースで、水上最速記録の自己最高442km/hの更新に挑戦しようとしてボートが転覆、ボートごと川に投げ出されて死亡した。

 2 トランプの概要

 トランプ(trump)という呼び方は日本と韓国(トゥロンプと発音する)だけのもので、正しくは「Playing card」と呼びます。語源はラテン語のトリウンフス(triumphs:勝利、凱旋)といわれ、その意味から遊ぶときに使う「勝利の札」「切り札」となりました。
 トランプは、昔は「西洋かるた」と呼ばれていましたが、幕末から明治にかけて来日した欧米人が遊んでいるところで「トランプ」と連発したことから、その札のことをトランプだと呼び間違え、明治20年代から「トランプ」と呼ばれるようになりました。
 トランプは、ポーカーサイズとブリッジサイズがよく使われます。どちらも縦の長さは3.5インチ(8.89cm)ですが、横の長さはポーカーサイズで2.5インチ(6.35cm)、ブリッジサイズで2.25インチ(5.715cm)とポーカーサイズの方が幅が広くなっています。
 トランプの形には、次の4種類があります。

英語記号 意味
スペード spade ラテン語で剣を意味し、その剣が変化したもので、王や軍隊を表す
ハート heart キリスト教の聖杯が変化したもので、宗教家や僧侶を表す
ダイヤ diamonde 金貨が変化したもので、富や商業人を表す
クラブ club 棍棒が変化したもので、農業や農民を表す

 この表では黒、は赤になっていますが、これら4種類をスート(suit、複数形でスーツ:suits)またはマーク(mark)と呼びますが、ここでは「形」と呼ぶことにします。
 数札には、形ごとにA(エース、Ace、1)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、そして絵札のJ(ジャック、Jack、11)、Q(クイーン、Queen、12)、K(キング、King、13)の計13種類で52枚、そしてジョーカー(Joker)が1、2枚あって計53、4枚から成り立っています。
 ジョーカーについては、タロットの大アルカナの1つである「うつけ者、道化師」が変化したという説と、それとは関係なく19世紀末に考案されたという説があります。ジョーカーは市販されているもので2枚入っているものもありますが、うち1つは準札(エキストラジョーカー、extra joker)といい、一部のゲームにしか使われません。
 4枚のAのうち、SAだけが飾りが入っているものもありますが、これはイギリスで、17世紀から納税の証拠として、王冠やリボン、製造元の入ったスタンプをSAの上に押す義務に由来します。
 トランプの絵札は、大概上下で線対称になっていますが、これは1813年にドイツで、対ナポレオン戦勝記念として作られたもので、逆の位置を直して手の内を読まれないようにするためといわれています。
 絵札にもモデルだけでなく、西洋占星術の12星座の守護星としていますが、そのモデルは次表のとおりです。
絵札星座モデル
おひつじ座 現代デンマークの国民的英雄オジェ
うお座 14、5世紀の騎士ラ・イール(La Hire:本名Etienen Stefan de Vignole)
さそり座 シャルルZ世・ルイ]T世の近衛隊長とも円卓の騎士ともいわれているヘクター(Chetor)
いて座 円卓の騎士として知られる伝説上の人物ランスロー(Lancelot)
かに座 知恵と勇気の女神アテナ(Αθηνα:Athena)と同格の女神とされるパラス(Παλασ:Palas)
てんびん座 ユダヤの女勇士ともカール大帝の義理の娘ともいわれているジュディス(Judith)
おうし座 アマゾン女王パンテンラー(Pantenra)または旧約聖書のヤコブの妻ラケル(Rachel)
おとめ座 シャルルZ世妃、アラブンのマリー(Mary)、または女王のラテン語訳のアナグラム・アルジーヌ(Argine)の諸説あり
みずがめ座 ソロモン王の父で、古代イスラエル王ダヴィデ(David)
しし座 フランク・西ローマ両皇帝のカール(Karl)大帝
やぎ座 ローマ皇帝ユリウス・カエサル(Jurius Caesar)で、1490年頃には「VENI VIDI VICI(来た、見た、勝った)」と書かれたことも
ふたご座 マケドニア王アレクサンダー大王(Alexandre)だが、アーサー王、カルタゴ将軍ハンニバルだったことも


 3 トリックゲームにおける札の強さ

 トリックゲームにおける札の強さは、基本的にAが最も強く、K、Q、J、10、9、8、7、6、5、4、3、2の順で、数が同じなら、大概の順に強くなります。ジョーカーがあるときはもっとも強い札として位置づけられていますが、好きな札に変えたり、逆に邪魔になることもありますので、うまく使うようにしましょう。
 札の強さの説明に、切り札(trump)と台札が欠かせません。台札は最初に場に出た札で、切り札は普通より強い札のことを言います。台札が出る(lead)と、次の者は台札の決まりに従って台札と同じ形の札を出して(follow)いかなければなりません。無ければどの札でもよいです。みんなが一通り出したところで勝負が決まります。
 札の強さは、台札と同じ形のAから2、他の形のもの(捨て札:discard)は弱い札になります。
 しかし、切り札は、台札よりも強くなりますが、台札と同じ形のものが手札にあるときは、台札と同じものを出さなければなりません。
 よって、札の強さは、切り札、台札と同じ形の札、その他の形の札の順になります。
 一例として、A、B、C、Dの4人で遊んでいたとします。まず、Aが台札としてD7を出しました。すると、次に出すBは、手札にの札を持っていればそれを出さなければなりませんが、幸いD8を持っていましたので、それを出しました。今度はCが出す番ですが、あいにく手札にの札を持っていなかったので、代わりにS9を出しました。最後はDの番ですが、やはりの札も、Cが出したの札もなかったので、代わりにH6を出しました。これで4人が1枚ずつ場に札を出したことになります。さあ、ここで勝負となります。この時点では、D8を出したBが勝ちになります。ところが、Cは「台札の8より強い札を出したのに9が弱いのは納得しがたい」と抗議します。しかし、Aは、「台札のを出さなかったのだから、勝負を捨てたのと同じだ」と鎮めます。つまり、台札と違う形の札は台札より弱い札になるのです。ここで、切り札がだったとしますと、切り札のH6を出したDが勝ちになります。今度はBが「台札の8より弱いのを出したくせに」とこぼします。しかし、Cは「切り札がより強いんだからしょうがないよ」となだめます。つまり、切り札は台札より強い札になるのです。

 4 切り混ぜ方と親決め

 さて、遊ぶときには、札切り(シャッフル:shuffle)と札重ね替え(カット:cut)を行わなければなりません。まず、札切りには次のやり方があります。

名称 英語 解説
縦切りヒンディー
シャッフル
札を縦に引くもので、アジアで使われる
Hindi shuffle
横切りオーヴァーハンド
シャッフル
札を横にして立てて切るもので、欧米で使われる
overhand
shuffle
パラパラ切りリフルシャッフル札を分けて弾き落とす鮮やかなもので、練習で巧くなる
riffle shuffle

 そして、札重ね替えは札切りの後で行われます。これは親が右隣の者に札の山を2、3組に分けて入れ替えさせるものです。
 遊びには札を配ったり切り札を決めたりする親(ディーラー、dealer)という進行役が欠かせません。その決め方は次に示すやり方がありますが、好みで決めて下さい。もっとも、上の2つの方が気分が出ますが。

仮親(誰でもよい)が1組の札を横滑りするように並べてそれぞれ引いた札の強さで決める
仮親の左隣から札を1枚ずつ引いて特定の札を引いた者がなる
じゃんけんで勝った者や遊ぶ者の代表の一人がなる

 さて、これから札を配る訳ですが、親は裏向きにして1枚ずつ親の左手隣の者から時計回りに配ります。このとき、札が表向きにならないように心して下さい。
 これらの言葉を表にまとめますと、次のようになります。

日本語 英語解説
dealer 札を配る者で、札引きやじゃんけんなどで決める。
place テーブルといった、遊ぶ所。
場札 opened cards 場に表向きにしておいた札。
山札 stock 手札を配った残りで、場の真ん中に山のようにして置いておく札。
手札 hand みんなに配られた札。
台札 starter 遊びの基になる、初めに出された札。
切り札 trump その遊びにおいてとりわけ力のある札。
捨て札 discard 場に捨てておいた要らない札。
パス pass 自分の順番が回ってきても決められたことをせずに次の者に譲ること。
チップ chip勝ち負けの基準になる、金銭の代わり(金銭では違法行為になる)。碁石、マッチ棒、おはじきなどでもよい。

1人で
2人で
家族向け
一般向け
ラミー、ポーカー、ブリッジ
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